路肩を走っちゃだめ。

連続殺人事件がメリーランド州で発生した。
担当した若刑事は、当初連続になるとは誰も思っていなかったため
新米のへっぽこ。
とんちんかんな質問をしてどやされること多し。

ともあれ、連続殺人が連続であることは
「被害者が路肩に大の字で張り付けられて、死因は轢死。」
という一点でしか可能性はない。
つまり、連続ではないかもしれない。
若刑事の上司は、悪質なギャング関連で(つまり連続ではない)
調査を並行して進める、と言っているが、
若刑事は、なんとなく単独犯による連続殺人だと言う気がしていた。

確証はないが、なんとなく。

しかし、若刑事は被害者が全て毎日
ルート29で通勤していることに着目。
なにか近辺の社交クラブのつながりか?と調査を始める。

しかしつながりは何もない。

若刑事は、ルート29を毎日違う時間帯に走ってみることにする。
平行に走る大車線のルート95と比べて、
比較的朝晩のラッシュは少ないが、
それゆえに救急車や消防車がとおることが多い、ということに気がついた。
そして、周辺の首都環状線のあおりを食らって、偶にラッシュがあるということ、
それゆえにルート95を利用する人より、ルート29の利用者はラッシュ慣れしていない。

緊急車両、というところから、若刑事はあたりの
病院や消防署をつぶさにしらべはじめた。
どうせ彼女もいないし、趣味もないつまらない男。
夜のサービス残業なんてへっちゃらだった。

ついに、若刑事は真犯人を突き止めた。
病院の線から。
犯人は、落ち着いて、ルート29沿いのスターバックスで
キャラメル・フラペチーノを頂きながら、こういった。

「法を破ったのは、彼らの方なんですよ。」

男の話はこうだった。

「私には、一人息子がいてね。
離婚したアル中の元妻から引き取ったんで、
たった一人の家族だった。

しかしあの子、H1N1にかかったような症状が出てね。
あの日、痙攣を起こして、救急車を呼んだんです。
しかしルート29が混んでいてね。
ほら、救急車なんだから、普通車はよけるでしょう?
でも、普通車は避けるにも、もたもたして、なかなか進めなかった。
だから、運転手は路肩を走ろうとした。
しかしね、みんな自分勝手で、混んでいるからって路肩走っちゃっている車もいっぱいで。
それでも救急車は時速50マイルも出せなかった。

サイレンばかりがうるさくなっていてね。
息子の激しい呼吸も聞こえなかった。

病院に着いたら、医者はそりゃあ手際よく手当てしてくれましたよ。
でも間にあわなかった。
医者は、10分手当てが早かったら・・・と口惜しそうでした。

10分かあ。
10分差で息子の命を助けられなかった。
私は10分、どこで無駄にしてしまったんだろう?と自問しましたよ。

ルート29です。

最近、幸いナンバープレートはデーターベース化されているし、
あの、路肩を走っていた不法な車両の登録なんて
すぐにアクセスできたし、
私も職業柄、見た数字は忘れないたちでね。」

話が終わるまで、一言も声を出さなかった若刑事だったが、
最後に男が話題を変えたときのみ、答えることができた。

「実は、私、辛党なんです。
甘ったるいキャラメル・フラペチーノなんて、頼むんじゃなかった。」

「如何して頼んだんだ?」

「息子が好きだったんですよ。
これから刑務所に行くんだから、
お腹に、息子の好きだったものを入れておこうと思って。」


若刑事は、上司に報告した。

「すみません。連続じゃないみたいですね。
ギャング路線の調査に、協力させていただきます。」

若刑事はまた上司にどやされた。

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今日の通勤はすごい渋滞で、
それで路肩を走る車が山ほどいて呆れたので、
ギア1でトロトロ運転の車内でこんなチンプ話を妄想した。

路肩を走るのは絶っっ対!共和党の奴らだ!

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