ゴーレム5
そして事件から2日経って、
ネイサンの家族と、葬式の算段のためもう一度会う予定の日。
俺の所にも(地獄の)使いは来た。
「よう。相変わらずこの世の終わりみてぇな
しけたツラしているな。」
日に焼けた顔の周りのもじゃもじゃの赤毛の髭と
適当に切った、これまたもじゃもじゃの短髪の髪は
髪だか髭だか鼻毛だか、境界線がわからない。
まるでトイレブラシだ。
俺はそのトイレブラシを下からにらみつける。
「・・・あンたの顔見ただけで、
この世の終わりは十分堪能したよ。」
事件を聞いて、両親が送りつけたのだろう。
兄、ジェイがどうかぎつけたのか、マーク・コレッティの玄関先に立っていた。
いまどきコール天のシャツのすそををジーパンのなかに入れて、サスペンダーをしている。
コートも着ないで。60年代かよ。場違いもはなはだしい。
何だってこんなのと血が繋がってんだ!
「家に帰ぇれよカウボーイ。ここは首都ワシントンDCだ。
あンたの来る所じゃない。」
俺はわざと、今ではジョークでしか使わないネブラスカなまりで言ってやった。
懐かしいと同時に、不自然にそれは耳に反響し俺を不愉快にした。
「苺ショートケーキちゃんが生意気な口たたくな。
と言って、兄は家に入り込もうとしたので
すかさずドアを閉めようとしたが、
その樽腹を、ぼよよん、と挟んで、ドアは逆に勢いで大きく開いてしまった。豚め!
俺が唖然と開いたドアを見ているうちに、兄はずかずかと家に入って来た。
「勝手に入ってくるな
俺ンちでもねぇんだぞ!」
「ぉーい。そういきり立つなよスコット。」
とうとうマーク・コレッティがのそのそと論文机の部屋から出てきて仲裁した。
彼も大概四角い巨体ではあるが、兄と並ぶと小さく見える。
「兄上さん、も遠くから来た上に、まだ朝の10時前だ。
コーヒーと、ベーグルでよろしいかな?」
「有難う。いただきます。ジェイと言います。
弟がお世話になっております。ミスター・コレッティ」
考えてみれば、マーク・コレッティもテキサスはヒューストン出身で、
この手の輩の扱いには慣れている、のかもしれない。
そして、俺よりもずっと大人だ。
マーク・コレッティの仲裁で、ジェイは今日のところは近くのホテルに泊まり、ペンタゴンの観光をすることになった。 ジェイの好きそうな時間の殺し方を提案するマーク・コレッティは、南部のRed Necksには過去に相当苦労したんだな。
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英語かいせつ~:
ストロベリーショートケーキ、はスコットランド直系の
赤毛の女性が可愛いねvという意味で、そういう呼び方をすることあります。
特に子供の娘さんとかね。
でも決して男性に対しては、喧嘩売ってんじゃなければ使っちゃいけないよ(苦笑)